AIの能力について語られる時に、キーワードとなるのが、「強いAI、弱いAI」があります。「強いAI」というのは、いろんなことに対応できる汎用性を持ったAIです。「弱いAI」とは範囲を限定して能力を発揮する特化型人工知能のことを指します。
AIの実現している状態はどのようになっているか下記で見て行きましょう。
強いAIと弱いAIの定義
定義は
・強いAI:いろんなことに対応できる汎用性を持ったAI
・弱いAI:範囲を限定して能力を発揮する特化型人工知能
になりますが、AI研究の最大の課題と呼ばれているのがフレーム問題になります。
フレーム問題
1969年にジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズによって指摘されて以降は、AI研究を行うにあたってずっと悩ませてきている課題になります。
下記はマッカーシーとヘイズの論文からの引用になります。
課題:部屋の中にバッテリーと時限爆弾が入った箱が置いてある。AIを搭載したロボットにバッテリーを持ち出すにように命令をしました。
ロボット1号:バッテリーの持ってくるという課題に集中した結果、爆弾も一緒に持ってきたらどうなるのか気付かずに爆発してしまった。
ロボット2号:目的遂行時に起こりうる可能性を考慮するようにロボットを改良した。しかし結局、目的を遂行する前に時限爆弾は爆発してしまった。天井は落ちないか?壁の色は変わらないか?変わったら起きることは?などの目的と
無関係な可能性まで考え続けてしまった。
ロボット3号:無関係なことを考えないようにロボットを改良した。しかし今後は部屋の前で停止してしまった。「関係ないことは何か」を考え続けたためだ。
フレーム問題とは、「何か行う時には、どこまでの可能性を考えればいいのかを決める必要があるが、それは非常に難しい」ことを指しています。
人間は今までの経験などから大体の目安を付けられます。AIにはそれが非常に困難なのです。
今主流のAIは?
現在、世の中で実現しているAIは、全て弱いAIと言って間違いありません。あらかじめ決められた範囲では素晴らしい能力を発揮しますが、それ以外の事は出来ません。
例えばAlphaGoは囲碁では誰にも負けない実力を持っていますが、今日の晩御飯の提案をすることが出来ません。それでは、SiriやAlexaなどの音声アシスタントはどうでしょうか?
色々な質問に答えてくれたり、買い物や部屋の温度調整までしてくれるのでかなり汎用性が高いように見えます。しかしこれも音声認識に他の機能を組み合わせる事で、出来ることの範囲を広げているに過ぎません。
しかし弱いAIが大量に生み出されて、それらを統合、制御できるような能力を持つAIができれば、それは強いAIと同等の存在になることも可能かもしれません。
汎用性を持つAIとは?
単体で汎用性を持つAIとはどのようなものが存在するのでしょうか?強いAI・汎用型人工知能のことを明確に区別するために、「AGI Artificial General Intelligence」と呼ぶ人たちもいます。
AGIを実現する、すなわち人間の脳と同等の機能を持つものを実現するならば、まず人間の脳の働きがどのようなものなのかを考える必要があります。
人間の脳は実に様々な思考を行うことが出来ます。「直観」を導き出すために今までの経験の他にも、好き嫌いなどの感情や身体状況など多様な要素が関係しています。真の意味で強いAIを作るのであれば、その領域まで踏み込む必要があります。
脳の構造を模倣するアプローチについて
強いAIを開発するために、脳の構造を模倣しようというアプローチが行われています。現在は脳科学とAI研究の接点は増えて、融合させて研究を進める方向にあります。
現在のAIブームの火付け役と言えるディープラーニングで使われるニューラルネットワークという仕組みも、人間の脳の神経細胞の仕組みをプログラム上で再現したものです。AlphaGoの開発者であるデミス・ハサビスは脳科学の研究者でもあり、脳研究の成果がAI開発に生かされています。
脳の仕組みそのものが全て完全に解明されたわけではありません。脳の解明とAIの発展を共に進める試みも進められています。脳の機能を人工的に実現するには、ソフトウェアだけでなくハードウェアも合わせた開発が必要であり、高性能停電チップの開発にも力が入れられています。現在研究を進められている機関には、EUのHumanBrainProjectや、国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)の脳情報通信融合研究センターなどがあります。
まとめ
AIの開発は続けられていますが、最終的に賢さを定義するとすれば課題解決能力ではないでしょうか。AIが難しい課題を解決出来るようになればなるほど、賢くなったと言えるでしょう。
今後もどのような発展をするのか注目していく価値があるでしょう。